道草・イヌの行動の不思議

(2)イヌが他の動物の糞や遺骸、ときにはタバコの吸い殻に
しつこく体を擦り付けるのはナゼ?

いつもの慣れた散歩道・・・、道端にネズミの遺骸を見つけたイヌが、何を思ったのか、突然その遺骸の上に寝ころぶように肩先を押しつけ、ゴロゴロと転げ回ることがあります。ネズミの遺骸だけでなく、それは馬糞の山だったり、タバコの吸い殻だったりします。(1)で、イヌの体臭による個体識別について書きましたが、このように自分とは関係の無い臭いを体に擦り込むような行為は、いったいイヌにとってどんな意味があるのでしょうか。

今回は、この行動に関する管理人の持論を展開してみたいと思います。
とりあえず「情報お持ち帰り説」とでも名付けておきましょう・・・。

イヌの祖先、オオカミは互いに協力し、群として行動することで、独りで生活するよりも多くのメリットを得られるように進化してきました。ですから、オオカミの血を引くイヌの行動の多くは、もともと群社会にとって有利な方向に働く行動の名残りと考えられます。

群のような集団生活をする上で重要なのは、お互いにコミュニケーション(情報のやりとり)をとるということです。前回の(1)で説明したように、イヌの体臭というのは、いわば彼らの顔です。これは、互いのコミュニケーションの最初の一歩となるわけです。このような匂いによるコミュニケーションの中には、ある程度時間が経過しても伝達可能なものがありますね。例えば、イヌが電柱にオシッコをひっかけるマーキングなども、その一つです。オシッコの匂いは、長時間その場所に残りますから、「ここに我あり!」という情報を、時間を経て他のイヌに伝えることが出来ます。これは匂いの情報をその場所に残す方法ですが、逆に「匂いの情報を持って帰って伝える」ことだって、重要なハズです。私は、それが「イヌが他の動物の糞や遺骸、ときにはタバコの吸い殻にしつこく体を擦り付ける理由」の一つではないかと考えています。

オオカミの群は、広大な縄張り内で生活しています。縄張りを維持するためには、縄張り内の出来事をできるだけ把握する必要がありますが、一頭が全ての縄張りを歩き回って全てを把握するのは、とても骨が折れます。ところが、彼らは群を作って生活していますから、自分が知らないことを他の個体に「教えてもらう」ことが出来れば、情報量は飛躍的に増すでしょう。そして、彼らの生活に重要な情報を匂いとして持ち帰るようなこの行動が保存されてきたのではないのでしょうか。例えば、獲物となる動物の糞や遺骸ですね。これらの匂いを身につけて群に持ち帰ることで、群全体に匂いの情報を伝えることが出来るわけです。(タバコの吸い殻に関しては、たまたま、この行動を誘導するような物質がたばこの吸い殻に含まれているからだと思います。詳しくは、こちらへ。)
・・・と偉そうに「情報お持ち帰り説」をブチ上げてみましたが、残念なことに、この説は単なる私の想像に過ぎません。えー、要するに証拠となるような観察記録やデータについてほとんど知らないのですね。実際に彼らの行動を観察せずに、机上の空論をブチ上げるのは、非常に危険なことだと思います。それがこの説の最大の弱点ですね。そこで欲しいと思った情報は、「生態や行動の詳細な観察記録」です。できれば、主観の少ない、客観的な記録が望ましいですね。「情報お持ち帰り説」を考えながら、「必要な情報の共有」というのは、本当に大事なことだと痛感しました。実際に、オオカミの群の中で観察されるだろう似たような行動が、どのような時に、どんな風にして現れるのか・・・その事を確認することが出来たら、改めて「情報お持ち帰り説」を考え直してみたいと思います。
*いったいどうしてこんな行動をするようになったか・・・すなわちキッカケについては「転位行動」ではないかと考えていますが、この件に関してはページを改めて論じたいと思います。
2002年1月
「ソロモン王の指輪」管理人
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